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競走馬私論―馬はいつ走る気になるか

競走馬私論―馬はいつ走る気になるか
藤沢 和雄
定価: ¥ 1,680
人気ランキング: 277,000位
おすすめ度:
発売日: 2000-09
発売元: ザ・マサダ

正に人生の教科書
この本は競走馬についてのことにとどまらず、藤沢先生の競走馬に対する真摯な接し方は我々社会人の日ごろの生活・仕事についても通じるものがあると思います。『相手の中の中まで熟考すること』『手を抜くことを徹底的に許さない』この本を読んで見つめて直してみてはどうですか?

カリスマトレーナーは、とても人間臭い人であった
藤澤調教師は、馬の調教が仕事であるが、そこで養われた観察眼は実に多くの示唆に富んでいる。特に印象深いのは、調教師試験での質問に答えようとして、正確に答えようとするため直線的思考になって試験管の術中にはまってしまうくだり。又「ハッピーピープル・メイク・ハッピーホース」という言葉。馬を扱うには大らかさが必要である。馬は人間以上に言うことを聞かない。言うことが聞かないのは自分にとっては不都合なだけで、馬にとっては人間の言うことを聞く方がおかしい。そして、サービス精神。この本の端々にも、読者に対するサービスが多くあったような気がする。最も恐れているのが、奢りであり、初心を忘れること、など藤澤調教師が人間として実に魅力的で、人間的であることが忍ばれる一冊である。岡部騎手もそうだが、こうやってファンに語り掛けてくる、ホースマンが増えるほど競馬はますます向上してゆくのであろう。

イギリスに夢を見た
男のシンデレラ物語である。著者は人生を漂流していた。教員免状をとった。しかし、教育実習に行って自分には無理だと感じる。これって大事な感覚だ。大抵の人は自分を捨てて簡単に妥協していまう。そのとき、救いの手が伸べられる。なぜか? きっと性格がよく、気働きができる、そばにいてほしいタイプの人間だったと推測する。実家の近くの牧場の手伝いをしているうちに、牧場主の良熊さんは「外国はいいぞ。藤沢君、外国に行ってみないか。外国の馬は素晴らしいぞ」と熱っぽく語りかける。父親は猛反対する。「夢なんてのは、寝ぼけた奴がみるもんだ!」。良熊さんは、何度となく著者の父を訪ね説得を重ねる。そして、イギリスへの旅立ち。ここで、目の覚めるような体験を積む。興味深いのは、イギリスでは、厩務員の給料がやたら安く設定されていること。調教師や騎手になろうとする人の一ステップと位置づけられている。これはとても合理的システムである。この分野に適正のある人をフィルターで漉しとる仕組みだ。残酷とは思わない。たまたまこの分野に向いている、向いていないだけのことだ。どんな人でも、何かの仕事には非常に適正があるので、どんどん移ってみればよいということだろう。
イギリスで誠実で聡明で勤勉な仕事を続けた著者の未来は、もうシンデレラである。人生、めぐり合わせであるが、正直が生きたのが効いたのだと思う。
私は馬券を買ったことがない。今後もないと思う。この本はノンフィクションとしてとても楽しんだ。ロマンとはいろんなところにある。少しの勇気があるかどうか、運命は試しているのかも知れない。

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